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建設DXとは?業界が抱えている課題や進め方、導入すべきデジタル技術を解説
昨今、日本国内の多くの業界でDXが推進されており、建設業界も例外ではありません。
建設DXは、建設業界の課題解決に役立つ取り組みとされていますが、具体的にどういった進め方で何の技術を導入すべきかわからず、現場のDXがなかなか進まないケースもあるでしょう。
この記事では、建設DXが必要とされる理由や得られるメリットを解説し、建設DXの進め方や用いられる技術を紹介します。
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建設DXとは?その重要性と背景
建設DXとは何かを知るために、まずDXの定義を改めて理解しましょう。
DXとは「デジタル・トランスフォーメーション」の略語で、データやデジタル技術を活用して顧客目線で新たな価値を創出し、ビジネスモデルや企業文化などの変革に取り組むことです。
つまり、DXはただデジタル技術やツールを導入するだけでなく、技術を活用して価値を生み出し、変革に繋げることを表します。
建設業界で建設DXが必要と言われるのは、データやデジタル技術の活用によって建設業界が抱えている様々な問題を解決できるからです。
DXに伴う「2025年の崖」
DXに伴う重要なワードが、「2025年の崖」です。
2025年の崖とは、2018年に経済産業省が発表した「DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜」で提示された言葉です。
現在多くの企業で使われている既存システムは、事業部門ごとに構築されている事が多く、全社で横断的なデータ活用ができない場合があります。
また、過剰にカスタマイズされており、時代の変化に合わせた業務プロセスの変革を阻害しているケースも見られます。
DXを進めたくても、データ活用を行うためには既存システムの問題をまず解決しなければなりません。業務を見直す必要があるため、現場の負担も大きくなりやすいです。
しかし、既存システムの課題を解決しなければDXが実現できないだけでなく、2025年以降最大12兆円の経済損失が生じる恐れがあります。この状況を「2025年の崖」と呼びます。
経済損失が生じるのは、デジタル競争で負ける、システムの維持管理費用が高額になる、サイバーセキュリティなどのトラブルリスクが上昇する、IT人材が不足するなどの理由があるためです。2025年の崖に陥らないために、建設業界でもDXを進めなければなりません。
建設業界が抱えている課題
建設DXは、建設業界が抱えている課題の解決に繋がると言われていますが、具体的に以下の課題が常態化しています。
- 人材不足
- 長時間労働
- 労働生産性の低さ
- 技術の継承
人材不足
建設業界では、人材不足が深刻な課題です。
国土交通省が公表した資料によると、建設業に就いている人の数は、2022年時点で20年前と比べて20%以上減少しています(※)。就業者の中でも、建設技術者数は横ばいです。
2022年の建設業への入職者は約22万人ですが、2002年よりも約60%減少しています。製造業と比較すると、建設業の離職率は高卒者で約15%、大卒者で約10%も高いため、若手人材の確保も進んでいません。
長時間労働
常態化している長時間労働も、建設業の大きな課題です。
2022年度の産業別年間実労働時間を見ると、建設業は全産業と比べて68時間長いです。同年の年間出勤日数も、建設業は全産業と比べて12日多い結果でした(※)。
働き方改革で大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から時間外労働規制が見直されましたが、建設業は長時間労働が常態化しているため猶予期間が設けられ、2024年4月からの適用となりました。これを「建設業の2024年問題」と呼びます。
ルールを守らない場合は罰則が科されるため、長時間労働の是正は緊急度が高いです。
なお、「建設業の2024年問題」については、以下の記事もあわせてご覧ください。
労働生産性の低さ
建設業の課題として、労働生産性の低さも挙げられます。労働生産性とは、従業員1人当たりの付加価値です。少ない労力や資源でモノやサービスを作れれば、労働生産性が高いとされます。
厚生労働省が公表している産業別の労働生産性の推移を見ると、建設業の労働生産性は近年上昇傾向にあるものの、他の産業と比べると低いです(※)。
労働生産性が低い場合、より多くの労力や資源を投入しなければならないので、人手不足に悩む建設業界では生産性の向上が必要です。
技術の継承
建設業では、技術の継承問題も見られます。先述のとおり、建設業では人材不足が深刻で、若手人材の離職率も高いです。技術者の高齢化が進むと多くが引退するため、技術の継承が進みにくい状況にあります。
若手人材を確保して育成しなければ、ベテランの技術者が持つ優れた技術が継承されません。技術が継承されなければ、工事の品質低下やコスト上昇を招く恐れがあります。
建設DXによって得られるメリット
従来の建設業界の在り方を大きく変える建設DXの推進により、前述の建設業界で常態化している課題を解決できる可能性が高まります。建設DXには、以下のメリットがあるからです。
- 生産性の向上
- 働き方改革の促進
- 技術継承の促進
各メリットを詳しく解説します。
生産性の向上
建設DXを推進すると、生産性の向上に繋がります。
建設業で生産性向上を実現するには、1人当たりの労働時間を減らしながら、仕事を担当する労働者の数も減らさなければなりません。ロボットやAI(人工知能)などに頭脳労働を任せると、無駄な時間を省き仕事に必要な人数を減らせます。
業務を効率化できれば、空いた時間を別の作業へ充てることができます。
働き方改革の促進
建設DXの推進により、働き方改革が促進されます。2024年4月から、時間外労働の上限規制が建設業にも適用されました。
しかし、長時間労働が常態化している建設業界では、時間外労働の削減は難しいと考える企業も多いです。
建設DXでデジタル技術を活用すると、長時間労働の是正に繋がります。例えば、現場から事務所に戻らなくても、クラウド上の施工管理システムで日報作成やデータ整理が可能です。他にも、現場立ち会い検査をオンラインで行えるなどのメリットがあります。
長時間の残業や土日出勤を減らせば、働き方改革を促進でき、人材確保に繋がる可能性もあるでしょう。
技術継承の促進
建設DXは、技術継承の促進にも役立ちます。職人の作業をコンピューターで解析し、言語化して研修に繋げると、効率的に技術継承が可能です。
また、建設DXは一人前の職人に育てるための時間短縮にも繋がります。デジタル化によってベテランの職人が若手をリモートで指導し、技術を教える動画をスマートフォンで確認すれば、効率的に若手職人を育てられます。
建設DXを推進する国の取り組み
建設DXは、建設業の企業がゼロから考えて進めるべきものではありません。国による取り組みも進められているため、適宜取り入れながら建設DXを進められます。
国が建設DXを推進するために行っている取り組みとして、以下が挙げられます。
- i-Construction
- BIM/CIMの適用
i-Construction
i-Constructionとは、ICTの全面的な活用施策を建設現場に導入して、建設生産システム全体の生産性向上を図る取り組みです。生産性を向上させて、建設現場の魅力アップを目指しています。
i-Constructionの施策として行われているのは、ICT土工や3次元データ流通、施工時期の平準化、コンクリート工の規格標準化などです。
BIM/CIMの適用
BIM/CIM(Building/Construction Information Modeling, Management)は、計画や調査、設計の段階から3次元モデルを導入し、その後の施工や維持管理の段階でも3次元モデルを連携・発展させ、関係者の情報共有を事業全体で無理なく目指す取り組みです。
BIM/CIMの適用により、一連の建設生産や管理システムの効率化や高度化を図れます。最新のICTを活用すると効率的に情報共有ができ、質の高い建設生産や管理システムの構築に繋げられるため、ミスや単純作業を減らし工期を短縮できるメリットがあります。
建設DX推進の課題
建設DXを進めると、建設業界が抱える様々な問題の解決に繋がります。しかし、現状では建設DXが著しく進んでいるとは言えません。
2021年の総務省の調査によると、建設業でDXに取り組んでいると回答した企業は全体の20%程度です(※)。19%ほどの企業は今後実施を検討していると回答したものの、60%以上の企業が今後も実施する予定がないと回答しました。
なお、建設DXが進まない理由は、以下のとおりです。次項で詳しく解説します。
- 現場へのDX施策導入が難しい
- 設備投資が困難
- DX人材の確保や育成が進まない
現場へのDX施策導入が難しい
建設現場へのDX施策導入が難しいため、建設業のDXは遅れています。
建設現場では多くの作業がアナログで行われているので、デジタル化によって効率化を目指す必要があります。
しかし、そもそも慢性的な人手不足で、新たなツールを使えない場合も多いです。
契約工期内で工事を竣工させる現場と、建設業の事業変革を望む本支店や発注者では目的が異なるため、現場への導入サポートを的確に行わなければDXは進みません。
また、各種法令の遵守や品質を確保するための検査業務などは複雑な作業で、全てをデジタル化できません。人間によるチェックをなくすことはできないため、現場へのDX導入が進みにくいです。
設備投資が困難
設備投資が困難なことも、建設DXが進まない原因のひとつです。
建設業は作業工程や関係者が多く作業が複雑になりやすいため、デジタル化を進めて明確な効果を出そうとすると、巨額の投資や組織体制の確立が必要です。
大規模な変革を進めるには、現在の経営やビジネスモデルに大きな影響をおよぼすほどの投資が必要なので、建設DXが進みにくくなっています。
少額の投資で効果を出せるよう、取り組み方法を考えなければなりません。
DX人材の確保や育成が進まない
DX人材の確保や育成が進まないことも、建設DX推進の足かせとなっています。
建設業は慢性的な人手不足だからこそ、DXを推進する人材の育成も進みにくいです。人材確保のために、国土交通省の地方局でDX人材を育成するセンターなどが稼働しており、研修や講習が行われています。
建設DXを成功に導く進め方
建設DXは、経営層が方針を明確化してトップダウンの取り組みを進めながら、現場で継続的に改善活動を行う必要があります。
一般社団法人 住宅生産団体連合会が2022年に公表した「DX推進計画策定ガイドライン」で建設DXの進め方を解説しているため、以下で紹介します(※)。
建設DXに関する認識を共有し、機運を醸成する
まずは建設DXの推進に関する取り組みを明確にし、必要性を経営層から社内外に発信します。
建設DXによってビジネスモデルや業務プロセスを変革し、企業文化を変えていく目的も明確化しましょう。組織全体で行う持続的な取り組みであると共有すると、継続的に施策を進められます。
建設DXは、単なる電子化ではなく変革を伴うものであり、大規模なものではなく身近で実践できるものと意識を醸成する姿勢が大切です。
建設DXの推進に伴い、組織の整備や権限移譲、適切な人材のアサイン、予算配分、プロジェクトや人事評価制度の見直しなどに取り組みましょう。
建設DXの推進計画を策定する
組織の方針が決まり意識が醸成されたら、DX方針(目的)、DX戦略(目標)、DX計画(実行計画)の3つのDX推進計画を策定しましょう。
DX方針(目的)は、事業の方針に対しDXで実現する目的として、顧客サービスの向上や働き方改革の推進、生産性向上のいずれかを策定します。
DX戦略(目標)は、事業の戦略に対しDXで達成する目標を策定します。スモールステップでDXを成長させていくロードマップを描きます。対象工程や情報取得元工程を設定すれば、一部の工程だけ改善されて関連工程の負荷が上がる事態を防げます。
DX計画(活動計画)は、DXの施策を企画しどの工程にどう導入するかを計画するもので、業務プロセス構築やシステム開発の設計などを策定します。具体的な導入施策と予想効果を算出し、計画に沿って実行しましょう。
建設DXを実行する
DX推進計画を策定した後は、計画に基づき個別の取り組みを実行します。取り組みを実行する際は、PDCAサイクルを繰り返し回すことが大切です。
建設業は工程数も関係者も多いため、最初から大きな変革を目指さず少しずつプロセスを変えられるよう実行します。DXを推進するには、開発、導入、改善、拡張が必要です。既存ツールを利用する場合は、導入と改善のみを行います。
建設DX推進を管理する
建設DXには、デジタル化の推進と、業務を変革させて新たなビジネスモデルを創出する目標があります。これまでと異なる取り組みが必要なので、DXを推進させるための管理項目の制定が必要です。
施策に対して方針や戦略を制定し、企業全体の方針や戦略を管理する必要があります。
建設DXを支える最新技術とその応用
建設DXで用いられる技術は幅広く、工程によって必要な技術も異なります。先述のBIM/CIMなど国が推進している技術の他に、DXを推進するためのサービスを提供する会社が採用している技術も多いです。
建設DXを支える代表的な技術は、以下のとおりです。
- AI(人工知能)
- クラウド
- ICT
- IoT
それぞれの技術について詳しく解説します。
AI(人工知能)
AIは、「Artificial Intelligence(人工知能)」の略称です。入力されたデータを分析し、区別するためのパターン確立の学習と、パターンに従ってデータの区別を行う推論の2つで機械学習を行います。
建設業では、報告書の作成やコンクリートのひび割れの図面化など、頭脳労働的な作業の自動化に使われています。
クラウド
クラウドサービスとは、インターネット環境などを整備すれば、場所や端末を問わず、ユーザーが手元のコンピューターで利用していたデータやソフトウェアを利用できるサービスです。
建設業では、クラウド型の建設プロジェクト管理サービスの導入や、クラウドストレージを利用した書類や図面データの共有などが行われています。
ICT
ICTは「Information and Communication Technology」の略で、情報通信技術を意味する言葉です。i-Constructionの中でも、ICT土工(施工)が施策のひとつとして位置付けられており、ICT塗装工やICT浚渫工などの普及や促進も図られています。
調査や設計、施工、維持管理、修繕の一連の建設生産システムで、効率化や高度化による生産性向上に寄与する情報通信技術が、建設ICTと呼ばれます。
従来の測量をドローンによる3次元測量に変える、設計や施工計画をアナログではなく3次元測量データから自動算出する、ICT建設機械で施工する、検査を書類ではなくドローンによる3次元測量で行うなどの形で取り入れられています。
IoT
IoTは「Internet of Things」の略で、様々なモノがインターネットと繋がることをさします。モノを通じて収集したデータをインターネット空間に送信し、データを分析し活用すると新たな価値の創出に繋がります。
建設現場にIoTを導入すると、建設機械と設計データなどモノとモノが繋がります。ICT建機による3次元データを活用した施工や検査など、自動化やロボット化が可能です。
建設DXの導入技術を比較するなら
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2024年に開催される東京展では、スパイダープラス株式会社、株式会社アンドパッド、株式会社MCデータプラスなど、建設DXに必要な技術やサービスを扱う企業が出展を予定しています。
2024年の大阪展では、や株式会社フォトラクション、株式会社シーティーエスなど、建設DXを考える際に導入を検討したいサービスを提供する企業が出展しました。
出展をご希望の企業様は、こちらもあわせてご確認ください。
JAPAN BUILD「建設DX展」の出展について詳細はこちら
【展示会 開催情報】
<東京展>会期:2024年12月11日(水)~13日(金)10:00~18:00(最終日のみ17:00終了)会場:東京ビッグサイト
<大阪展>会期:2025年8月27日(水)~29日(金) 10:00~17:00 会場:インテックス大阪
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建設DXで業界の課題解決を目指そう
建設DXは、建設業で常態化している長時間労働や人手不足、生産性の低さなどの問題解決に繋がります。
組織で目的を共有し、計画を立てて少しずつ実施すると、デジタル化が進むだけでなく組織やビジネスモデルの変革が可能です。建設DXを支える技術は様々なので、必要なものを導入しなければなりません。
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監修者情報
田中嘉浩
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 DX推進コンサル部 部長
システム会社での開発から運用の経験を活かし、中小企業でのシステムリプレイスや業務の可視化を中心に活躍中。特に経営者から担当者まで全体を見渡したプロジェクトの管理と進行能力は評判で、「安心と信頼」をモットーに中小企業~大企業まで幅広くIT化を推進している。