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GX(グリーントランスフォーメーション)とは?
建築業との関わりや取り組みを解説
近年、グリーントランスフォーメーションやGXなどの言葉を耳にする機会が増えてきました。脱炭素化社会を目指すための取り組みを行う企業も増えています。
グリーントランスフォーメーションは、建築業界でも関わりが深いです。興味はあるものの、どう取り組めば良いのか、他の企業はどう取り組んでいるのかなど、気になる企業担当者の方も多いでしょう。
この記事では、グリーントランスフォーメーションの必要な背景や建設業界との関わり、実現への取り組みなどを解説します。建設業界で行われている具体的な取り組みも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
グリーントランスフォーメーションとは?
グリーントランスフォーメーションとは、温室効果ガスを発生させる化石燃料をなるべく使わずに、風力や太陽光発電などのクリーンエネルギーの使用へと進める変革です。
脱炭素化社会の実現に向けて様々な活動が行われており、Green Transformationを略してGXとも呼ばれています。環境問題の改善だけでなく、経済成長の促進も目標として含まれている活動です。
グリーントランスフォーメーションが必要な背景
グリーントランスフォーメーションが必要な背景には、主に以下2点があります。
- 地球温暖化が進み、環境問題が深刻化しているため
- エネルギー供給が不安定なため
それぞれ詳しく解説します。
地球温暖化が進み、環境問題が深刻化しているため
グリーントランスフォーメーションが必要な背景のひとつに、近年の地球温暖化を原因とした環境問題の深刻化があります。特に気候変動問題は深刻な問題です。
世界各国で、温室効果ガス排出量削減が緊急課題となっている中、日本政府は、2050年までに温室効果ガス排出量を全体としてゼロの状態にする「カーボンニュートラル」を目指すと宣言しています。
地球温暖化が進むと、経済損失も計り知れません。地球温暖化の最大の原因となっている温室効果ガスの削減、カーボンニュートラルを推進するためにも、グリーントランスフォーメーションは重要です。
エネルギー供給が不安定なため
日本はエネルギー資源に乏しいため、他国からの輸入に頼っている部分が大きいです。実際に、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻により、エネルギーの安定供給が難しい状況が続きました。
これを機に、安定供給できる状況を作ることが重要だと再確認され、国際情勢に左右されないエネルギーの確保が目標として掲げられました。再生可能エネルギーを国内だけで安定供給、確保できる状況が理想とされています。
政府によるグリーントランスフォーメーション実現への取り組み
政府はグリーントランスフォーメーション実現に向け、様々な取り組みを行っています。具体的な取り組みは、主に以下のとおりです。
- GX実行会議の開催
- GXリーグの設立
- GXに関連する法律の成立
それぞれの取り組みを詳しく解説します。
GX実行会議の開催
GX実行会議とは、GXを実行するために、必要な施策の検討の場として設置された会議です。2022年7月から開催されており、議長は内閣総理大臣、副議長はGX実行推進担当大臣と内閣官房長官、その他有識者によって構成されています。
2022年7月に行われた第1回GX実行会議では「GX実現に向けた基本方針~今後10年を見据えたロードマップ~」が閣議決定されました。内容は以下のとおりです。
GXリーグの設立
GXリーグとは、カーボンニュートラル実現や社会変革を目指し、GXに積極的に取り組む企業が、同様に取り組んでいる企業群と連携するための場です。カーボンニュートラル時代の未来像や、新市場の創造に向けた議論などが活発に行われています。
GXリーグは経済産業省が主導しており、グリーントランスフォーメーションの実現を目指す多くの企業が参画しています。
GXに関連する法律の成立
2023年5月に以下2つのGX関連法が成立したことで、企業もGXの実現への取り組みを円滑に進められます。
- GX推進法(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)
- GX脱炭素電源法(脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律)
GX推進法(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)は、以下5つに関する法案です。
- GX推進戦略の策定と実行
- GX経済移行債の発行
- 成長志向型カーボンプライシングの導入
- GX推進機構の設立
- 進捗評価と必要な見直し
GX脱炭素電源法 (脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律)は、以下2つに関する法案です。
- 地域と共生した再エネの最大限の導入促進
- 安全確保を大前提とした原子力の活用
GXに関連した法律が制定されたことで、グリーントランスフォーメーション実現に向けた施策が具体化しました。
グリーントランスフォーメーションと建築業の関わり
建築業界は、施工や材料、建物の運用など、様々な面で脱炭素化が必要とされています。実際に建築物分野は、日本の木材需要の約4割を占めています。
経済産業省が2023年3月に発表した「GX実現に向けた今後の取組」で、住宅・建築物の今後の道行きを発表しています。
建築業界で、住宅や建造物の省エネ化、省エネ性能の高い建材の採用などが推進されているとわかります。
さらに、令和7年4月には、改正建築物省エネ法・建築基準法の全面施行が予定されています。これにより、全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務付けられるため、住宅と建築物の抜本的な省エネ化が進むでしょう。
年々建設業界でのグリーントランスフォーメーション実現に向けた取り組みは盛んになっており、今後も様々な取り組みが計画されています。
建築業界のグリーントランスフォーメーション実現への取り組み
建築業界では、グリーントランスフォーメーション実現に向けてどういった取り組みが行われているでしょうか。
国土交通省が発表した、GXの実現に向けた各分野の取組内「建設施工におけるGXの実現に向けた取組」では、以下の3点が挙げられています。
- 建設材料の脱炭素化
- ICT施工による施工の低炭素化
- 革新的建設機械の導入拡大
それぞれ詳しく解説します。
建設材料の脱炭素化
建設現場では、環境にやさしい原料を用いる取り組みが進められています。具体的な取り組みとして、国土交通省が発注した公共工事の中で、低炭素コンクリートなど低炭素材料の導入促進などが挙げられます。
また、低炭素型コンクリートブロックを活用したモデル工事も実施されています。モデル工事を通して、建設材料の調達面などで課題がないか検証が行われています。
ICT施工による施工の低炭素化
ICT施工とは、施工現場にて生産性の向上や品質の向上のため、建設ICT(Information and Communication Technology)と呼ばれる情報通信技術の導入をいいます。
ICT施工を活用すると、丁張りなどをはじめとする重機周りの作業が軽減され、補助作業が不要です。施工が進めば、建築現場での生産性向上に期待できます。
また、現場での作業時間が短縮されると、建築機械の稼働時間の削減、機械によるCO2排出量の減少が期待できます。
革新的建設機械の導入拡大
国内産業部門では、建設機械がCO2排出量の約1.4%を占めています。従来も燃費性能の向上などによりCO2削減を目指してきましたが、抜本的な機構やシステムの見直しが必要とされています。
軽油を燃料とした機械から、水素エンジンやバイオマス燃料などを活用した機械へと、動力源の変更が行われています。
また、令和5年2月には「令和4年度 建設施工の地球温暖化対策検討分科会」が開催され、革新的建設機械の認定制度が検討されました。
グリーントランスフォーメーション実現には革新的建設機械の導入拡大が必要不可欠のため、認定機械使用へのインセンティブも検討が進んでいます。
建築業で企業がグリーントランスフォーメーションに取り組むメリット
建築業界で企業がグリーントランスフォーメーションに取り組むメリットには、以下の3点があります。
- 公的予算の増加やサポートが期待できる
- 企業のイメージアップに繋がる
- コストを削減できる
それぞれ詳しく解説します。
公的予算の増加やサポートが期待できる
グリーントランスフォーメーションは、重点投資分野のひとつとして位置づけられています。今後、企業がGXに取り組む際に活用できる補助金が増加する可能性が高く、サポート面も充実していくと考えられます。
現在政府が打ち出しているGX推進への補助金には、以下があります。
- グリーンイノベーション基金事業
- 地域脱炭素の推進のための交付金
- 革新的GX技術創出事業(GteX)など
その他にも様々な補助金があるため、グリーントランスフォーメーションに取り組みやすいでしょう。
企業のイメージアップに繋がる
グリーントランスフォーメーションに取り組むと、世界的なトレンドである環境問題の解決に向けて取り組んでいるプラスのイメージがつきやすいです。
積極的に取り組みを公表し、社内外にアピールできると、企業イメージの向上に繋がるでしょう。先進的な企業であると消費者にも伝わりやすいため、製品販売量や売り上げにも期待できます。
コストを削減できる
グリーントランスフォーメーションに取り組むと、省エネへの取り組みが必要不可欠です。自然と消費エネルギーを減らすことが可能なため、エネルギーにかかるコストを削減できます。
建設業界でのコスト削減には、建設機械の省エネ化、材料の見直しなどが挙げられます。太陽光発電や再生可能エネルギーの導入を進めることで、さらなるコスト削減に繋がるでしょう。
グリーントランスフォーメーションに取り組みたいなら
JAPAN BUILDの「建物の脱炭素 EXPO」へ
JAPAN BUILDの「建物の脱炭素 EXPO」は、GXソリューション(グリーントランスフォーメーション)、太陽光、蓄電池、省エネ空調、省エネコンサルティング、サステナブル建材が出展します。
また、施設オーナー、ビル管理会社、商業施設や店舗の管理担当者、住宅メーカー、リフォーム会社などが来場する、建物の脱炭素化やカーボンニュートラルに特化した専門展示会です。
毎年東京と大阪で年2回開催しており、併催するセミナーでは最新の業界動向や各社の取り組み、出展社の製品・事例紹介が行われています。
2024年大阪展では、主にアルミサッシなどの建材を生産、販売している、アルメタックス株式会社が出展を予定しています。
JAPAN BUILD「建物の脱炭素 EXPO」について詳細はこちら
出展をご検討の企業様は、こちらもあわせてご確認ください。
JAPAN BUILD「建物の脱炭素 EXPO」の出展について詳細はこちら
【展示会 開催情報】
<東京展>会期:2024年12月11日(水)~13日(金)10:00~18:00(最終日のみ17:00終了)会場:東京ビッグサイト
<大阪展>会期:2025年8月27日(水)~29日(金) 10:00~17:00 会場:インテックス大阪
【来場希望の方】
<東京展> 12月 東京ビッグサイト開催!
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【出展検討の方】
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パンフレット、出展料金、会場レイアウトなど
グリーントランスフォーメーションのメリットなどを理解し、企業に取り入れよう
グリーントランスフォーメーションとは、脱炭素化社会を目指すための取り組みです。建築業界とも関わりの深いもので、建築における課題の解決は、グリーントランスフォーメーションの実現に大きく影響します。
政府の具体的な取り組みは、GXに関連する法律の成立やGX実行会議の開催などです。建築業界での取り組みとして、建設材料の脱炭素化や施工面での新しいシステム導入、革新的建設機械の導入などが進められています。
また、企業がグリーントランスフォーメーションへ取り組むと、コストの削減や企業イメージアップなどにも繋がります。グリーントランスフォーメーションへの取り組みを検討中なら、ぜひJAPAN BUILDの「建物の脱炭素 EXPO」にご参加ください。
JAPAN BUILDの「建物の脱炭素 EXPO」では様々なセミナーも開催されていますが、直近ではグリーントランスフォーメーションを議題としたセミナーも予定されています。具体的な企業の取り組み例も学べる貴重な機会です。
販路拡大や新規導入を図りたい場合も、「建物の脱炭素 EXPO」への出展・来場をぜひご検討ください。
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監修者情報
(株)ローバー都市建築事務所 代表取締役 野村正樹
一級建築士 / インテリアコーディネーター / 宅地建物取引士 / 古民家鑑定士一級
同志社大学法学部を卒業後、京都工芸繊維大学造形工学科へ編入学。(株)NEO建築事務所を経て、2000年「ローバー都市建築事務所」設立。後に、京都工芸繊維大学大学院建築設計学 前期博士課程修了。2006~2018年 毎日新聞京都版 朝刊「きょうと空間創生術」第1回~第274回執筆掲載。
ローバー都市建築事務所の公式ホームページはこちら
https://www.rover-archi.com/